ビキニふくしまプロジェクトの会員 野上暁さんは、もと大手出版社の編集者、今は女子大学の先生です。
自ら児童文学の創作活動をし、同時に児童文化の研究書批評書を何冊も出しているオーソリティです。
野上さんは編集者であり、創作活動もしている堀切リエさんと組んで、子どもの未来社から『カリーナのりんご―チェルノブイリの森』『イラクから日本のおともだちへ』の2冊を出しています。
そのお二人から「絵本を出しませんか」と打診があったのが13年7月。
そこで8月下旬に集まり、島田さんのスライドを見てもらったこところ、その場で写真絵本の刊行が決まりました。
「文章は誰が」といわれたので「羽生田さんにお願いしたい」と私が応じました。
羽生田さんは二つ返事で引受けてくれました。仕事ができる人は行動も早い。
出版社は14年3月のビキニ60周年に間に合わせたいので、9月中に初稿が欲しいといいます。
会の活動も立て込んでいる中、どうにか初稿ができたのは9月30日。やれやれ一安心。
ところがこれからが大変でした。初稿では、架空の人物の「おばあちゃん」を主人公にしたのですが、実在のリミヨさんが話すようにしたほうがいいのではないか。文字数が多すぎる。この言葉は小学生低学年にはわかりにくい。ひらがなかカタカナか漢字か。この写真は今いちだ。写真の位置が右よりだ。などなど…。
プロのやりとりは、ビキニふくしまのチラシを作るときの小林さんと相澤夫妻の作業で見ていましたが、今回もなかなか。
でも、羽生田さんは臆することなく話し合って、書き直しを何回もやってくれました。さわやかでした。
『ふるさとにかえりたい』はロンゲラップの豊かな暮らしを奪ってしまった水爆実験とその後遺症を描いているのですが、ロンゲラップをふくしまと置き換えると、ふくしまの50年60年先が見えて来ます。写真で見るロンゲラップがきれいなことも飯舘村の美しい風景に重なります。
写真をよく見ると、リミヨさんがとてもおしゃれなのがわかります。ポイズンにおしゃれ心は負けないぞという強さなのでしょう。
「かえるか、かえらないか、みんなの気もちは、ずっとゆれている。ポイズンは、ぜんぶきえていないんだから、まようのがあたりまえよ」―羽生田さんのやさしさが悲しさ、辛さをしっかり伝えています。
こうして、ビキニふくしまプロジェクトの活動から、絵本「ふるさとにかえりたい」 リミヨおばあちゃんとヒバクの島が
生まれました。